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とてもアメコミっぽい映画『ミスター・ガラス』

By 2019年2月2日 No Comments

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https://www.glassmovie.com/

M.ナイト・シャマラン監督『ミスター・ガラス』を2019年映画初めに観てきたので、今回はその感想を。映画の感想書くの久々。

観てしばらく時間が経ってから面白く思えた

『アンブレイカブル』と比較すると、『アンブレイカブル』の時にあった緊張感が今作であまり感じられなかったのは率直に残念で、鑑賞後すぐは駄作だったかなと思っていた。

しかしながら『スプリット』を経て3人のキャラクターが集ったことで生まれるメタなアメコミ展開が面白かったので、今では面白い映画だったと感じている。

というわけでシャマラン版のアベンジャーズと言っても過言ではない、『ミスター・ガラス』の感想について少し。

控えめの緊張感

悲惨な鉄道事故に巻き込まれるも無傷で生還し、超人的パワーに目覚めて街のチンピラを捕まえる自警活動に勤しむデヴィッド・ダン。

身体が弱く幼少期よりアメコミにのめり込み、アメコミに出てくるヒーローたちは形を変えて現実にも存在すると信じる超天才ミスター・ガラスことイライジャ・プライス。

幼少期の虐待がきっかけで24の多重人格を持つ身体となり、強靭な身体的変化をももたらす超凶暴な人格ビーストを発露させるケヴィン・メンデル・クラム。

紹介するだけで既にスーパーヒーローものっぽさがすごい、この3人が同じ精神病院に閉じ込められて、自分をヒーローだと思い込んでる人の治療を専門とする精神科医の診断を受けることになるところから物語が始まる。

ヒーローの存在を信じない、この精神科医の質問や行動を通じて、3人が実はただの人間で能力や資質は妄想や幻覚だったのではないかと観客側が疑うように仕向けられる。のだけど、ここにあまりハマれなかった。

今思うと『ミスター・ガラス』だけで考えれば、この精神科医のやり取りに十分緊張感を感じられるし、面白い作りだったのではないかと思う。

ただ私はおそらく多くの人がそうであるように『アンブレイカブル』の続編としての『ミスター・ガラス』を観に行っていたのでそうは思えなかった。

『アンブレイカブル』『スプリット』を観ていると3人が特異な人物であることは明白であって、3人がただの人間だったとすると前二作は何だったのかという話になるので「いくらシャマランでも、というかシャマランだとそれはないでしょう」という考えが頭から消えず、残念ながら3人を疑う気にならず精神科医側に何かあるよねと予想してしまっていた。

そんなわけで、この後書く後半のメタ的なアメコミ展開は面白かったのだけど、そこに至るまでの緊張感のなさがあまり好みでなかった。

アメコミっぽさのあるメタ的な展開(ネタバレあり)

正義(デヴィッド)と悪(イライジャ)の対立構造に、正義でも悪でもない化け物(ケヴィン)という第三勢力が現れる構図で、さらには悪と組んでいた化け物が悪を裏切るのもアメコミっぽい。

登場人物の関係性がアメコミっぽい。「散歩」するダンを家からパソコンを使ってサポートする息子ジョセフなんてバットマンの執事アルフレッドみたいだし、ケヴィンに寄りそおうとするトレイシーも化け物は女性や子供には心を許す感じがアメコミっぽい。

3人を監視するために病院に監視カメラがめちゃくちゃ設置されるんだけど、割と簡単に病室から脱出できてしまうご都合主義がアメコミっぽい。

ダンが能力に目覚めるきっかけとなる鉄道事故に、実はケヴィンの父親も巻き込まれていて、イライジャが一つの鉄道事故で正義と化け物を両方を作り出していたマッドな人だったと判明するのもアメコミっぽい。

最後の方でヒーローを疑う精神科医はヒーローの存在を知る謎の組織による、ヒーローの存在を隠蔽するための策略だったというのもアメコミっぽい。

イライジャがケヴィンとデヴィッドを新しく街に完成したタワーで戦わせようと行動しているのは、イライジャ本人もコミックの限定版っぽいと言及しているくらい、アメコミっぽい。

が、実はイライジャのその計画は見せかけで本当は病院内でケヴィンとデヴィッドを戦わせようとしていたという裏のかき方がアメコミっぽい。

と思ったら、それはイライジャが謎の組織の策略に気が付いていて監視カメラが多く設置されている病院で戦うことで、わざと自分たちの映像を記録に残しデータを外部に送るためだったという伏線の張り方がアメコミっぽい。

最終的にヒーロー3人が死んでしまうも、エンディングでジョセフ、トレイシー、イライジャの母親がヒーロー3人の映像を世界中に発信して希望をもった終わり方をするのもアメコミっぽい。

という具合にどこかで見聞きしたようなアメコミっぽい展開のオンパレードが続くのだけど、アメコミを信奉するイライジャが物語を動かしていることでこうした要素がメタ的に機能していて面白いと思えた。

メタ的な構造によって生み出されるフィクションとリアリティの混濁は一歩引いて観ると楽しめるのだけど、映画館で没入するにあたっては『アンブレイカブル』みたいに物語自体に緊張感がもっとあれば良かったのになあという思いが拭えなかった。

どうでもいいんだけど

この展開がヒーローアカデミアに採用されることがあったらヒーローアカデミア全巻買おうかなと思ってる。

アンブレイカブル(字幕版)

アンブレイカブル(字幕版)

スプリット (字幕版)

スプリット (字幕版)